説法・弟子・大学教授  Aさんの話を検証してみる

 Aさんの話を聞きながら、ある不安がよぎった。失礼ではあるが、本当か?ということである。インタビューが終わってから、いくつか検証できそうなものについて調べてみた。
 まずAさんが引用した釈迦の話は、仏教説話の一つ「キサーゴータミーの説話」だった。キサーゴータミーは初めて釈迦の弟子になった女性らしい。
 次に弟子である。Aさん曰く、弟子というか同じ志を持つ人がいて、三宮駅前で活動しているということであった。火・水・土が活動日だと聞いたため、水曜日に三宮駅前で捜索。残念ながら、出会うことができなかった。
 最後に。私がAさんに取材を申し込む前に、二人取材を申し込んだと聞いた。そのうちの一人が「社会学を研究している有名な岸先生」で、岸先生は「一般の人の歴史を聞いて本にしている」らしい。グランフロントの喫茶店で取材を受けたそうだ。Aさんからのヒントを元に探したところ、見つかった。岸政彦氏。立命館大学大学院の教授だ。教授の著書に「街の人生(勁草書房)」がある。その「はじめに」の一部を紹介しよう。
 「私は、『生活史』(ライフ・ヒストリー)と呼ばれる語りを集めるために、聞き取り調査をしています。生活史とは、簡単にいえば「自分の人生の語り」です。(中略)自分の研究や教育とは別に、どこで発表するというあてもなく、ただ、ああこの人は面白い、この人が好きだなあ、と思った人びとに、気軽に『インタビューさせてください』とお願いして、生活史の聞き取りをさせてもらってきました。」
 「街の人生」は、まさにその聞き取り内容をまとめた本だ。どうやら岸先生の授業を受ける学生も同じような調査をするようなので、Aさんが直接先生に取材されたかどうかはわからない。しかし関わりがあることは間違いないだろう。